« いいかげん将棋の最強人間×最強コンピュータ戦を開催すべきである | トップページ | 最も不公平で面白くないルール »

2016年5月11日 (水)

電王戦の規制(レギュレーション)について

ニコニコ超会議2015の超言論エリア「電王戦から考えるコンピュータと人類の未来」で、瀬名秀明氏が「コンピュータ×人間戦では、ルールをどうすれば面白くなるかを考えなければいけない」と語っています(http://logmi.jp/58993)。

同感です。ただし、コンピュータ将棋×プロ棋士において、みんなが面白いと考えるルールを作るのは、それほど難しくないと思います。第2回電王戦のルールが最も公平で面白い、と多くの方は考えると推測します。チェスでのディープブルー×カスパロフ戦のように、対戦中にプログラマーがコンピュータに入力したり、対戦中に人間がコンピュータを使用したりするのは純粋に人間×コンピュータと言えるか疑問に思うでしょうが(wikipediaのコンピュータチェスを参照)、第2回電王戦のルールで不公平と感じる人は、少なくとも対戦前に、いなかったはずです。

しかし、2013年の第2回電王戦でコンピュータ側が勝つと、第3回電王戦ではハード制限と事前貸出の規制がつきます。

この規制は「ドキュメント電王戦」にあるように、塚田氏が何百台ものハードの使用と、ツツカナの4手目までの指定を批判していることから出てきたのではないでしょうか。実を言うと、私は「ドキュメント電王戦」を読んでいたので、この規制が出てくるのは不思議ではありませんでした。しかし、今から考えれば、(塚田氏の涙に感動した私が言うのもおかしいですが)これは塚田氏の負け惜しみでしょう。勝っていたら、こんな不平を主張しなかったのは誰が考えても分かるはずです。こんな負け惜しみの不平は感情的に受け入れても、理性的に取り合うべきではありません。

コンピュータ側が何百台ものハードを使用するのが不公平なら、CPUを複数個集めたのも不公平になるんでしょうか? それはCPUの進化自体を不公平と言っているに等しいです。

ツツカナの4手目までを予め入力しておいたのは、対局相手の船江氏だけでなく、第2回電王戦参加者全員にツツカナを提供していたからです(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35787)。ここまで全員に研究されていたら、どうしてもツツカナの弱点をつかれて負けます。だから、4手目まで調整したのです。もちろん、対戦相手の船江氏はこの変更を一切批判していません。むしろ、ツツカナの作者の一丸氏はその穏やかな性格からプロ棋士たちに好かれていたようです。しかし、それを知らないのか、「ドキュメント電王戦」では当事者ではない大崎善生氏までがツツカナの変更を「後味の悪い物に」と批判しています。「ルポ電王戦」によると、2010年の清水市代×あから戦でも同様に4手目まで作戦を指定していましたが、その時は全く問題になっていません。

以上からも、上の二つの規制はコンピュータをろくに知らない人がつける不平に過ぎません。IT企業ドワンゴはそのことを当然理解していたはずです。

それにもかかわらず、第3回電王戦で上の二つの規制が決まります。電王戦final5局後の記者会見によると、ドワンゴが日本将棋連盟の反対を押し切ってまで、そう決めたようです(http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/328/328222/)。川上氏は「コンピュータ×人間は異種格闘技戦であり、公平なルールは存在しない」と何度も言っています。しかし、コンピュータ×人間戦に限らず、人間が定めたルールに絶対的な公平性など存在するわけがありません。私はこの川上氏の理屈に納得できません。

【日本将棋連盟が第3回電王戦のプロ棋士出場者たちを伝えてきた→ドワンゴ(一般人)からすると第2回と実力が大差ないメンバーであったので、トッププロを出すように要請した→日本将棋連盟が莫大な出場金額を要求してきた→払えないドワンゴは、それならとルール変更を提案した→日本将棋連盟は「ルール変更しなくても勝てる、そんな恥ずかしいことはしない」と主張した→ドワンゴ側が今回は「人間の逆襲」というテーマだと無理にそのルールを認めさせた→これなら勝ち越せると日本将棋連盟は確信していた→実際は、第3回電王戦でもプロ棋士側が負け越した→そんな情けない事実があるが、ドワンゴ側からそれをありのままに伝えると、「名誉を傷つけられた。将棋電王戦はもうしない」と日本将棋連盟から拒否されかねないので、言い出せないでいる】

こんな事情があるのではないかと、どうしても思ってしまいます。

なんにせよ、この規制が人間×コンピュータの決着を何年も遅らせることになり、その価値も下げることになりました。海外で囲碁でのコンピュータ優勢が先に明確になってしまった今、この規制は失敗だったとしか思えません。

« いいかげん将棋の最強人間×最強コンピュータ戦を開催すべきである | トップページ | 最も不公平で面白くないルール »

将棋」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 電王戦の規制(レギュレーション)について:

« いいかげん将棋の最強人間×最強コンピュータ戦を開催すべきである | トップページ | 最も不公平で面白くないルール »