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2016年9月21日 (水)

ソフト開発者を悪役にしたニコニコ動画の大罪

しばらくコンピュータと関係ない記事が続いたので、以前に書いた理屈の繰り返しになりますが、コンピュータの話題に戻ります。
最近、人工知能という言葉を新聞等でもよく見かけるようになりました。週刊ダイヤモンドの2016/8/27号でも特集記事があり、人工知能の分野で日本はアメリカに対して遥かに遅れている、下手したら中国にも遅れをとっている、と分析されており、またしても恐ろしくなってきました。
「コンピュータ脅威論の本質的な問題」の記事でも書きましたが、コンピュータで代替可能な仕事は、誰がどう抵抗しても、いずれ縮小していき、いくつかは消滅していくに違いありません。だから、それに対して規制などで守ったりするのは無意味です。本当にすべきことは日本の人工知能産業を育成して、コンピュータに代替される富を日本にもたらし、場合によっては海外にソフトを輸出して富を生み出すことです。これが逆になって、日本人に入っていた富を海外のソフト会社に奪われたら、悪夢です。ベーシックインカムを今後日本に導入したとしても、富の平等分配ではなく、貧困の平等分配になってしまうでしょう。
しかし、上記雑誌の記事では「日系メーカーがAIを使って競争力を高めた例は多くない」と書かれています。その理由として、東京大学の松尾豊准教授は「技術の問題より、人の心の壁の問題だ」と指摘しています。日本企業では、AI開発などのIT分野の評価が非常に低いそうです。
いつから、なぜ、こうなったのでしょうか?
それに答えられるほどの知識は私にはありません。ただ、電王戦は、日本でのプログラミング軽視の傾向を一変させる画期的なイベントにできる、人工知能の価値を日本人に知らしめる一大事件になれる! ……はずでした。
しかし、今に至るまで、電王戦で将棋ソフト開発者側を応援する人は少数派です。将棋ソフトの勝利を日本の人工知能技術向上の金字塔だと、歓喜する大衆の声は現在まで全く聞かれていませんし、これからも聞かれそうにありません。
その最大の理由は、ドワンゴが電王戦でソフト開発者を悪役にしてしまったことでしょう。(私もあまり考えていなかったので、本当ならこんなに偉そうに言える立場ではないのですが)どうしてソフト開発者が悪役になるのでしょうか?
多くのプロ棋士は将棋ソフトをバカにしてきました。将棋ソフトがプロ棋士に勝つことは永遠にないと見下していましたし、今でも将棋ソフトに対して「戦ってやる」という態度を貫いています。
一方、ソフト開発者は全員アマチュアです。相手のプロ棋士は1日中将棋のことばかり考えて、対局するだけで給料をもらっていますが、ソフト開発者は仕事や勉強の合間に、やっと強い将棋ソフトを作り上げても、給料はもらえていませんでした。
それでも、ソフト開発者はプロ棋士への敬意を示し続けています。将棋連盟を訴えた伊藤英紀氏でさえ、当初はプロ棋士へ尊敬の念を持っていたことが伊藤氏のブログを読めば分かるはずです。伊藤氏をいまだに悪者だと思っている方は本人のブログを読むか、最低でも次の動画(http://www.nicovideo.jp/watch/so14358566)くらいは観ておいてください。
こんな事実があるのですから、ソフト開発者を「不屈の」挑戦者、プロ棋士を「傲慢な」権力者と見せる方法はいくらでもあったはずです。
どうして、ドワンゴはそうしなかったのでしょうか? ITベンチャー企業のくせに、強者の味方をしないでほしかったです。今からでも、これまでのようなPVを一変させて(公式にお詫びしてもいいと思います)、電王戦を21世紀の日本のために価値あるイベントにしてもらいたいです。
ドワンゴの保守性は、電王戦の悪名高い規制にとりわけよく現れています。また繰り返しになりますが、次の記事でその規制について論じます。

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