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2016年10月10日 (月)

「人間とコンピュータの将棋対局に公平なルールは存在しない」は詭弁である

以前の記事で「人間同士の将棋対戦ルールも『完全に』公平にはなりえない」と書きました。それは事実でしょう。ただし、「人間とコンピュータの将棋に公平なルールは『絶対に』存在しない」は間違っているでしょう。人間とコンピュータの対戦だとしても、ほとんどの人が認める公平なルールが存在する場合もあるはずです。その一番良い例が、アルファ碁VSイセドル戦で、ルールが不公平だと言う声が世界的に全くあがっていないことです。一方で、電王戦では3年前からハード制限、事前貸出、改良不可の三つのルールが加わって、私を含めた多くの方がこのルールに疑問を投げかけています。

ハード制限のせいで、ソフト側に不利なハンデ戦になっていることは疑いようもありません。事前貸出と改良不可に至っては、電王戦が勝負として成立しないほど理不尽極まりないルールです。「最も不公平で面白くないルール」の記事にも書きましたが、改めてその理不尽さを説明します。

「電王戦の規制(レギュレーション)について」の記事でも触れましたが、理性的な人間ではまず浮かばない、この滅茶苦茶なルールの発案者は恐らく塚田氏(会見で泣いてしまうほど理性が崩壊していた人)です。この塚田氏の電王戦対局は、この電王戦こそ「人間がコンピュータに負けた瞬間だ」と今でも私に思わせているほど、劇的な一局でした。しかし、上のような滅茶苦茶なルールを提案されたら、「悔しすぎて理性がブッ飛んじゃったんだな」と見なし、その人をなぐさめるものの、重要な意思決定には加えないはずです。こんな塚田氏の主張を鵜呑みにした大崎善生氏も、将棋に没頭しすぎて理性が欠けてしまっていたのでしょう。

「ドキュメント電王戦」で、塚田氏は自分が戦ったわけでもないツツカナの最初の4手目までが入力されていて不公平だと愚痴っています。ここで、将棋を私と同じかそれ以上に知っている方に質問します。最初の4手目までをプロに打ってもらったとして、そこからプロと対局して勝てると思いますか? 勝てるわけないですよね。まして、この4手目までは相手の手を見て入力したわけでなく、勝負前から入力されていて、しかもツツカナ制作者が考え出しています。また、ここが一番重要なのですが、電王戦出場棋士の全員にツツカナは事前に貸し出されていました。だから、最序盤の少しだけプログラムを変更したのです。それで棋士が負けたのなら、棋士がツツカナより弱かったと普通なら判断するはずです。

それと、実は第3回電王戦でも、やねうら王だけでなく、直前のルール変更に伴うプログラム修正がponanza以外の全てのソフトに行われています(http://d.hatena.ne.jp/kanoke/20140319)。もしかしたら、この修正がなければ、第3回電王戦でも棋士側が勝ち越したのかもしれません。しかし、上のツツカナ戦でもそうなように、急なソフト修正で対応できなくなるほど、既にプロ棋士たちはソフトに勝てなかったのです。常識で考えて、実力で棋士がソフトに負けたとしか考えられないはずです。

前回の記事で、「プロに弱い、コンピュータに強いアマチュア」の裏にはインチキが隠されていると私が断定したのは、上のような事実があるからです。おそらく、そのアマチュアは少しプログラムを変更されると、もう勝てないに違いありません。もし最強将棋プログラムをいくら適切に変更しても、そのアマチュアがソフトに圧勝したとしたら、そのアマチュアは羽生氏にも負けるはずがありません。

ここまで読んで、まだ「改良不可」のルールが理不尽だと納得できない方に説明します。確かに、同じハメ手に何度でもはまる将棋ソフトの欠点は、人間の価値観なら、間抜けと感じるでしょう。また、相手に弱点があるなら、人間同士の戦いなら、そこを攻めるのは合理的です。しかし、人間VSコンピュータでは、その考えは通用しないんですよ! 少しは理性的に考えてください! なにも知らずに普通にコンピュータと戦えば、プロがまず負けるまで差がついてしまいました。勝負前にハメ手を発見できたら勝って、発見できなかったら負けるだけです。そんなの勝負と言えますか? もはや研究です。やる方も観る方も、つまらないこと、この上ありません。将棋の必勝法を見つけ出したい一部のマニアがすればいいだけで、公開対局にする価値はありません。まして、将棋を知らない人でさえ注目する人間とコンピュータの決戦にする価値はありません。

だから、公平に考えて、本当の決戦はもっともっと早くするべきだったんですよ! カルト化してしまった将棋ファンがそれを理解していなかったのならまだしも、囲碁で先に決着してしまった後でさえ、一流新聞社の朝日新聞までがあんなトンチンカンな社説(2016/9/26)を出すとは、理解に苦しみます。コンピュータのひどい誤解がここまで浸透していることに、日本のコンピュータ産業の後進性の大きな原因の一つがあるのではないでしょうか。

人間VSコンピュータの公式決戦は、そのボードゲーム史上に永遠に残るほど、注目が集まります。最近、あるアメリカ人のチェスファンから「最強のチェスプレイヤーは誰かと尋ねられれば、今でも、Carlsenではなくカスパロフと答える人が多いだろう」と言われました。人間VSコンピュータ決戦後に、人間同士の最強を決める意味などない、と見なされていることが理由かもしれません。

プロ将棋界の最大の間違いは、理不尽なルールを加えたり、非科学的な都市伝説を吹聴したりして、コンピュータとの最終決戦をここまで先延ばしにし、その価値を激減させたことです。近いうちにこのブログでも扱う予定ですが、「なぜ将棋で、トッププロがこんなに長期間コンピュータから逃げていたのか」というテーマは将棋史上に(もしくは日本史上にも)残る恥辱として記録されることは既に間違いないでしょう。情けないです。

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